2016年05月24日 (火) 02:09 | このエントリーを含むはてなブックマーク はてなブックマーク - 映画『ボーダーライン』 SICARIO ネタバレでお節介な解説 | | | Edit |
(ネタバレは概要紹介の後、「以下ネタバレ注意」注意書き以降から)


あれ?「ファウスト・アラルコンは組織のナンバー3」って言われてなかったっけ・・・?

そんな疑問が頭に引っかかり、でもwikipediaのストーリー欄は間違いだらけでアテにならないし、なによりラストが最高過ぎたので、映画『ボーダーライン』の2回目を鑑賞してきました。
やっぱり言ってる・・・。その後さらに脚本まで読んで理解が深まったので、詳細なストーリーを解説付けて書き記しておきます。大まかな位置関係の地図なども付けます。シンプルな筋立てながらも丁寧な説明が無いこの映画について、続編製作も決定したそうですし、頭を整理しておくのも良いでしょう。
ちなみに、登場する麻薬カルテル名などは実在する組織の名前です。

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【ストーリー(概要)】
メキシコの麻薬組織壊滅を目的とする特殊チームにスカウトされた正義感あふれるFBI女性捜査官が、目の当たりにすることになる麻薬戦争の最前線。謎に包まれた特殊作戦の顛末を通し、正義や法が存在しない衝撃の実態をリアルかつ極限の緊張感で描き出したサスペンス・スリラー。



ネタバレせずにこれ以上書くのは難しいのですが、基本的に凄くシンプルな筋立てでありながら、こんなストーリー(↑)だよと言われて想像するような展開にはならない、というかジャンルをも超えた気さえする展開が待っています。アクションやセリフは最小限、メキシコ麻薬戦争ものにしてはグロも最小限で、むしろ美しい映像で描かれるこの世界の説得力と緊張感はすごい。
監督、俳優、撮影監督の見事な実力を楽しめる良作です。
とにかくこれだけはもう一回言う。ラストが最高。あぁ、あの人物のあの表情!


【目次】
 1.主要登場人物
 2.舞台MAP
 3.ストーリー詳細
 4.考察など
   ●まず題名について
   ●「彼」がソノラ・カルテルのナンバー3である件 (続編について)
   ●現実のソノラ等の麻薬カルテルについて
   ●当初脚本からの変更点
   ●某所の警備が手薄過ぎるのでは、とかの話
   ●マットの計画はもともとどうだったのか
   ●監督ドゥニ・ヴィルヌーヴについて





~~~ 以下、完全にネタバレ ~~~




IMG_0309.jpg SICARIO - TIERRA DE NADIE



【1.主要登場人物】

●FBI
ケイト・メイサー: エミリー・ブラント
   FBIの誘拐即応班に所属する女性捜査官。
   デスクワーク経験無しの実戦派。過去の5回の急襲作戦は全て成功。
   フェニックス在住。夫とは離婚しており、子供はいない。長らく仕事一筋。
   特別捜査のストレスから禁煙していたタバコを再開。
   タバコの銘柄はINDIAN CREEK。(シルヴィオも同じタバコ。架空の銘柄)

レジー・ウェイン: ダニエル・カルーヤ
   ケイトの相棒。
   イラクへの派兵経験があり、法学学士も取得した優秀な捜査官。捜査官歴は1年半。
   ケイトの要望により、途中から特別捜査チームに加わる。

●特別捜査チーム
マット・グレイヴァー: ジョシュ・ブローリン
   自称、国防総省の顧問。実はCIA所属。
   対メキシコ・カルテルの特別対策チームのリーダー。
   どこかかなり上の高官達から超法規的な大きな権限を与えられている。

アレハンドロ: ベニチオ・デル・トロ
   人呼んで「幽霊」、「嘆きの検察官」。
   元はメキシコ・フアレス市で働く検察官だったが、ソノラ・カルテルに妻子を殺され
   復讐の鬼と化す。妻子殺害を命じたソノラ・カルテルのファウスト・アラルコンを
   殺害する目的の為に手段や雇用主は選ばない。
   現在はコロンビアの麻薬カルテル、メデジン・カルテルに雇われる殺し屋である。
   ファウスト・アラルコン殺害を目標とするCIAに協力し、「国防総省のコンサルタント」という
   肩書で今回の特別捜査チームに加わっている。

●麻薬カルテル側
マヌエル・ディアス: ベルナルド・サラチーノ
   ソノラ・カルテルのアメリカ国内組織におけるトップ。
   表向きは合法的な実業家で、冒頭の遺体発見小屋の所有名義も彼だが、
   ソノラ・カルテルとの繋がりの証拠は掴ませていない。
   というか、FBIの一般職員が見る事の出来るファイルには、
   彼の兄やいとこの存在は記載されていない。

ギレルモ: エドガー・アレオラ
   マヌエル・ディアスの兄。
   ソノラ・カルテルのフアレス市におけるトップ。
   メキシコの現地警察に逮捕・収監され、アメリカに引き渡される。

ファウスト・アラルコン: フリオ・セサール・セディージョ
   マヌエル・ディアスのいとこ。
   ソノラ・カルテルのナンバー3で、多くの処刑を命じた男。(考察に後述)
   マヌエル・ディアスのボスにあたるが、所在などの詳細は不明の人物。
   今回の作戦の最終ターゲット。

テッド: ジョン・バーンサル
   アメリカ・フェニックス市の警察官。
   レジーとは友人関係を築いており、ケイトもソフトボール大会で彼を見かけた事があった。
   実はソノラ・カルテルに買収されており、捜査情報を流していた。
   独身。離婚した妻との間に娘がいる。

シルヴィオ: マキシミリアーノ・ヘルナンデス
   メキシコの国境の町ノガレスに住む警察官。
   息子には銃に触れることを禁じ、サッカーにも付き合う良き父親であるが、
   ソノラ・カルテルに買収されておりパトカーを使って麻薬の運び屋をしている。

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【2.舞台の位置関係】

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  (劇中の舞台順: ①→②→④→②→⑥→①→⑦)

①フェニックス Phoenix
アリゾナ州の州都。
砂漠のど真ん中にある都市。
冒頭のチャンドラー市はフェニックスの東南側、
FBIフェニックス支部はフェニックスの北側、
ルーク空軍基地は西側にある。
ケイトもこの町で暮らしている。

②エル・パソ El Paso
テキサス州最西端エルパソ郡にある都市。
メキシコとの国境に接し、メキシコ人が多く移住している。
リオ・グランデ川を挟んでメキシコのシウダー・フアレス(フアレス市)と隣接するが、そのシウダー・フアレスとは対照的に治安は比較的良好である。
ギレルモの尋問等を行ったフォートブリス陸軍基地がある。

③カルタヘナ Cartagena
カリブ海に面した港町で、世界遺産に登録されたコロンビアきっての観光地。
この作戦が始まる前に、アレハンドロがいたという場所。
そこで何をしていたのかは映画では語られない。(当初脚本にはある)

④フアレス Ciudad Juárez
メキシコ、チワワ州最大の都市。
アメリカとメキシコの国境地帯の都市で2番目の大きさを誇り、シウダー・フアレスにはエル・パソと結ぶ4つの橋がある。
「戦争地帯を除くと世界で最も危険な都市」と呼ばれた事もある。(2016年現在は2番目)
劇中ではこのフアレス市のインパクトが物凄いのだが、実際にフアレス市が舞台となるのはギレルモ引き取り時のみである。

⑤モンテレイ Monterrey
モンテレイはメキシコ第三の都市でありヌエボ・レオン州の州都である。
アレハンドロの元同僚である検察官(?)の現在住む町。
治安はフアレスよりずっとマシ。

⑥ツーソン Tucson
アリゾナ州南東部に位置する内陸の都市。
入国管理所(Immigration Office)がある。
劇中で不法入国者のスカウトを行ったのがこの場所。

⑦ノガレス Nogales
ノガレスは町の真ん中に国境が通っていて、アメリカ側(アリゾナ州)とメキシコ側(ソノラ州)に分かれている。
劇中でシルヴィオ一家が暮らす街。この郊外にトンネルがあった。ファウスト・アラルコン邸はここから南西方面のどこか。

⑧メデジン Medellín
コロンビアで首都ボゴタに続く第二の都市。
1970年代にこの町でパブロ・エスコバルによって有名な麻薬カルテル(メデジン・カルテル)が創立されたが、1990年代には組織消滅。
現在は、富裕層の高層ビル群と貧困層の住宅街が共存し、治安も落ち着いているよう。
(劇中にこの町は登場しません)



【3.ストーリー詳細】

冒頭: SICARIOという言葉の説明
シカリオとはエルサレムの熱心党から由来する言葉である。
熱心党は、彼らの故郷を侵略したローマ人を襲い殺す者たち。
メキシコでは単純に「殺し屋」を意味する。


1日目: アリゾナ州チャンドラー(フェニックス近郊)の人質奪還作戦
FBI誘拐即応班のケイト率いるSWATチームは、ある民家の急襲作戦を行う。
中にいた数名のチンピラを制圧するが、壁の中に多くの死体が隠されている事に気付く。
壁の中の死体は、顔を潰されてビニールに包まれて吊るされていた。メキシコの麻薬カルテル、ソノラ・カルテルの特徴的な手口であるらしい。
廊下に15体、寝室に20体発見、床下と屋根裏はこれから調査、というところで、離れ小屋にしかけられていた爆弾が爆発。警察官2名が殉職。

なお、このような事件は現実に起きている。
麻薬カルテルが誘拐するのは金持ちだけではない。中南米諸国からアメリカへの入国をめざしてメキシコに集まる不法移民をターゲットに、密入国の手引きもする一方で、不法移民を誘拐して金品強奪したり、身代金を要求したり、麻薬や武器を密輸させたりもする。あげく殺害された被害者数十人の遺体が農場や廃坑で発見されたケースがある。実際の(遺体が発見されていない)被害者は多いと推測されている。

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1日目: FBIフェニックス支部のオフィス
会議室では会議が行われており、ケイトとレジーは外で待たされている。
サンダル姿の謎の男、マットはケイトが気に入った様子。法律の知識があるレジーは不要と語る。ケイトだけが部屋の中に呼ばれ、家族構成や麻薬カルテルについての知識等を聞かれる。

民家で見つかった遺体は、ケイトらが探していた人質たちのものではなかった。(別の場所で同じように殺されているのかもしれない。)
民家の所有名義は、マヌエル・ディアス。ソノラ・カルテルとの繋がりが噂されるが、表向きは合法的な実業家である。
ここでマットとFBIの上司は、ケイトの知らなかった話を始める。
マヌエル・ディアスはソノラのアメリカのボスで、ギレルモという兄がいること、いとこのファウスト・アラルコンはソノラのナンバー3であるが顔や住所等の個人情報は全く不明なこと。それらはケイトが読んだマヌエル・ディアスについてのFBIファイルには書かれていなかった事である。(ナンバー3の件についてはあらすじとは別に後述)
ケイトは、人質大量殺人の黒幕を逮捕できるというマットの言葉に誘われ、組織(FBI、国防総省等)を超えた特殊捜査チームに加わることを決断する。

マットは、まずはマヌエル・ディアスの兄ギレルモに会いに行くという。どこにいるのかと問うケイトに対し、マットは「エルパソ周辺だ」と言葉を濁した返答をする。それを聞いたFBIの上司たちはケイトから視線をそらす。

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1日目: メキシコ・ノガレスの父子(警官)
ケイト達の物語から離れ、メキシコ・ソノラ州ノガレス市に住む親子の様子がちょこちょこと挟み込まれる。
普通の親子に見える。
子供想いのこの男は、警察官である事がわかる。

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2日目: ルーク空軍基地 (アリゾナ州フェニックス)
翌朝、ケイトはマットに指定されたルーク空軍基地へ。
ルーク空軍基地はフェニックス市内西側にある。
早速飛行機に案内されて乗り込む。アレハンドロと初対面。国防総省のコンサルタント、と紹介される。アレハンドロはケイトに「フアレスに行ったことはあるか?」と質問する。「エル・パソへ行くんじゃないの?」と聞き返したケイトだったが、マットは聞き流す。
アレハンドロはうたた寝をしながら悪夢にうなされている様子。(おそらく妻子が殺された時の夢を見ていたのだろう)
正体不明のアレハンドロ、空軍基地を使用する権限まで持つマット、飛行機も自家用機らしいが軍人が操縦している。ケイトにとってはなんとも分からないことだらけである。

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2日目: フォートブリス陸軍基地 (テキサス州エル・パソ)
ケイト達を乗せた飛行機は、テキサス州エル・パソにあるフォートブリス陸軍基地に到着。
早速基地内で次の行動のブリーフィングを受ける。
集められていたのは、デルタフォース(陸軍特殊部隊)、連邦保安官、DEA(麻薬取締局)の歴戦のつわものといった様子の錚々たるメンバー。
ここから車に分乗して、メキシコの国境を越えた町、フアレス市の裁判所へ行き、ギレルモの身柄を引き取って基地へ帰ってくる、というのがこれから行われる行動だという。

フアレス市は国境を挟んでエル・パソと面している街なので、「エル・パソ周辺にいるギレルモに会いに行く」と言っていたマットの言葉は嘘ではない・・・とはいえ、国が違う。ケイトは不信感をマットにぶつけるが、言いくるめられる。
アレハンドロは、以前フアレス市で検察官として働いており、この特殊作戦参加前にはコロンビア・カルタヘナで働いていたと語る。(が、カルタヘナで何に雇われどんな仕事をしていたのかは言わない。)

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2日目: Welcome to Juarez (メキシコ・フアレス市)
昼。
部隊は国境を越えてフアレス市へ。
メキシコ警察が警備・誘導に付き、無事に裁判所へ。
途中で首や腕が切断された死体が橋から吊られているのを目撃したり、銃声が聞こえたりする。それがフアレス市の日常。
メキシコ警察は重武装のうえ、全員顔を隠して任務に当たっている。
アメリカの部隊も皆、サングラス着用。(着用していないマットやケイトは国境でも車から降りない。)
ちなみに、車がガタガタ跳ねるのは道路の舗装整備が悪いわけではない。スピードバンプという、自動車を減速させるために道路に設置されているカマボコ型の突起物のせい。日本でも立体駐車場などでたまに見かけるが、アメリカ辺りだと街中にたくさん設置されている。

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ギレルモの引渡しを受けると、即、アメリカへの帰路につく。国境の検問(入管事務所)も優先的に通り抜ける・・・はずだったが、メキシコ側検問を抜けた直後、アメリカ側検問に繋がる橋の上で渋滞に巻き込まれる(よく間違われているが高速道路ではない)。国境なのでいつも渋滞する場所ではあるものの、今回、部隊をも足止めする事になった渋滞は事故(故障車)によるもの。部隊はカルテルの襲撃に備える。おそらくこの事故もカルテルの仕業

不審車両2台を発見。包囲するが銃を向けてきた為、全員射殺。周りに民間人も大勢いるが躊躇なし。ケイトどん引き。が、更に後ろからメキシコ警察官(汚職警官と思われる)に銃撃されてケイトも反撃。射殺する。その後、一行は無事にアメリカ国境を渡る。

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2日目: フォートブリス陸軍基地でギレルモ尋問 (テキサス州エル・パソ)
部隊は基地に帰還した。
先ほどの法を無視した銃撃戦に抗議するケイトだが、マットに軽くあしらわれる。

基地では、今回のギレルモ引渡しのメキシコ側の担当者とアレハンドロが再会する。旧知の間柄であるらしい。「まだ戦っているとは凄い」というセリフから、検察官仲間であり、彼は今も検察官であるらしいことがわかる。
また、「逮捕後これまでよくギレルモの命を守り切ったものだ」というセリフから、先ほどのカルテルの襲撃は、ギレルモ奪還ではなく口封じの殺害を目的としたものである事が察せられる。
今はモンテレイ(メキシコ第三の都市。治安はフアレスよりずっとマシ)に住んでいるというその男は、アレハンドロにノガレス周辺に麻薬密輸に利用されているトンネルがあるらしいという情報を伝える。「君の目的にも役立つだろう。ただし3日もすれば奴らはそこを撤収してしまうだろうから急いだ方がいい」とも言う。この男はアレハンドロの今の正体を知っているということ、また、やはりカルテルはギレルモの口から情報が漏れる事を危惧しているという事である。

ギレルモの尋問開始。
部屋に入ってきたアレハンドロを見て表情が変わるギレルモ。足を蹴り開き、股間をギレルモの顔に押し付けんばかりの至近距離に仁王立ちするアレハンドロ。ギレルモは狼狽し、マットに救いを求めるような目を向ける。効果は抜群だ!

アレハンドロ 「ヤンキーランドは地獄だぜ」
ギレルモ 「メデジンこそ地獄だ」


ヤンキーランドとはアメリカの事である。ここアメリカでお前はひどい目にあうぞ、と脅している。
それに対するギレルモの返事、メデジンとは何か?映画のラスト近くでようやくその言葉が説明される為、この時点では分からないが、やはりギレルモもアレハンドロの正体を知っている。そして恐れている。但し、メデジンとは、実在する(した?)コロンビアの最大手麻薬カルテル名である。麻薬戦争について詳しい者なら、ここでなぜその名前が出てくるのかと考え、アレハンドロとこの特殊作戦の正体について禍々しい推察ができるだろう。

そしてギレルモへの尋問(拷問)が開始される。
水を使う事からウォーターボーディング(水責め)という手法が用いられたと思われる。映像には映らないし、ここでその手法を解説する事は避けますが、まぁ、ググれば、幸せにはなれませんが一つ賢くはなれます。私でも知ってるような有名な、短時間に情報を自白させられる(かつ体に傷をつけないで済む)手法。ちなみに、このウォーターボーディングは、イラクのグアンタナモ基地でテロリスト容疑者に対して行われた事が世の物議をかもし、2009年にオバマ大統領がウォーターボーディングを含む拷問を禁止とする大統領令を出しました。
まぁ、あの尋問部屋はそんな大統領令が遵守されるような場所ではないのですが。

尋問後のギレルモはどうなったのでしょうね・・・

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ウォーターボーディング - wikipedia


2日目: ギレルモ尋問中、「花火」を眺めるケイト (テキサス州エル・パソ)
ギレルモが拷問を受けている頃、いらつくケイトは禁煙を破る。そしてデルタフォースの隊員に誘われて、フォートブリス基地の屋上から「花火」を眺める。それは国境を越えたメキシコ・フアレス市内で銃弾が飛び交い爆発が起きている様子であった。
「ボスを失うと混乱が起こる」とデルタ隊員が言う。
ギレルモについては、マニュエル・ディアスの兄であるという事以外、何の容疑でどのように逮捕されたのか、ソノラ・カルテルの組織内でどのような立場の者だったのかは直接には語られない。しかしデルタ隊員のこの言葉から、ギレルモはソノラのフアレス市におけるボスだったと推察出来る。混乱とは、他カルテルとの抗争である。 (※考察の「現実のカルテルについて」参照)

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2日目: 一行はアリゾナ州フェニックスへ戻る
ギレルモへの拷問を終えた一向(マット・アレハンドロ・ケイト)はフェニックスへ帰ってくる。
そこでレジーが合流し、この特殊捜査班に加入。
ケイトが、FBIにおける相棒であるレジーも仲間に加えるよう、マットに強く迫ったようだ。その場面は描かれないが、この1日のあまりにも暴力的で謎の多い特殊作戦にかなりのストレスを感じている描写はある。
既に夜だが、マットは「このまま車でツーソンへ行く」と言う。

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2日目: 不法入国者をスカウト (アリゾナ州ツーソン)
一行はレジーの車でツーソンへ。(フェニックスから約2時間)
ツーソンでは、逮捕されたメキシコからの不法入国者が大勢集められていた
マットがFBIのケイトの名を騙り、その権限で地元警察に連れてこさせた。

アレハンドロは、メキシコ人の中からノガレスで捕まった者だけを残し、あとは帰す。
更にその中から以前にもアメリカ・アリゾナ州に来た者を探し、既婚かどうかや刺青の有無(カルテル関係者かどうか)をチェックしていく。

ちょっと待って。
ノガレスといえば、メキシコの警官親子が暮らしているメキシコの町だよね?
そのノガレス(メキシコ国内)で逮捕されたメキシコからアメリカへの不法入国者って、何か変じゃね?
そう思って調べてみたら、ノガレスという町は、その中央に国境が通っており、アメリカ側とメキシコ側が存在する町なのでした。

一方、何が行われているのか分からないケイトは、作戦の全容について教えなければ特殊捜査班から抜ける、とマットに詰め寄る。
「ノガレスの東にトンネルがあるとギレルモが吐いた。その場所を特定する。そうしてソノラ・カルテルに混乱を引き起こす。そうすればソノラ・カルテルのアメリカの最高幹部マニュエル・ディアスは、メキシコ国内の彼のボスに呼び戻されるだろう。そのボスとはいとこのファウスト・アラルコンだ。マニュエル・ディアスを追跡すれば、謎に包まれていたファウスト・アラルコンの所在が分かる。そういう作戦だ。」
所在が分かった次の行動については言わないところが一つのポイント。普通、逮捕すると思う。ケイトもそう思った事だろう。どんな混乱を起こすのかも言わない。(終始、マットは情報の一部しか言わないだけでギリギリ嘘はつかない。)
ケイトは、ギレルモがそんな重要情報を素直に自白した事が信じられない(拷問について知らない)が、とりあえず納得。
ケイトとレジーはマットから先に帰っていいと言われる。

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3日目: ケイトの自宅から、マット達の宿(拠点)へ (アリゾナ州フェニックス)
ケイトは、自宅で、新しくて洒落たブラを買うべきだとレジーから冷やかされる。
離婚して以来、全く男っ気の無い仕事一筋の生活をしているらしい。
ケイトとレジーはマット達が拠点としているモーテルへ。

モーテルの部屋の中には、マット・アレハンドロの他に、昨夜ツーソンでスカウトされた不法入国メキシコ人が数人いて、地図でトンネルの場所を特定していた。
ノガレスで複数回以上、不法越境をしたことのある不法入国者ならばトンネルについて知っているだろう、という事だったのだ。
映画本編には無いが、脚本では、この情報を提供した不法入国者達にはグリーンカード(アメリカの外国人永住権証明書)が渡されていた。

トンネルの場所が確定した途端、マットが「次はディアスの財布を荒らすぞ」と言いだす。

094 Sicario (2015)


3日目 銀行で洗浄屋逮捕 (アリゾナ州フェニックス)
FBIケイトの権限で、今度はSWATを招集。(冒頭の突入作戦もSWATだった)
銀行を見張る。
そこに現れた、多額の現金を入金した女性と、その車の運転手を逮捕。その女は資金の洗浄屋だった。アメリカ国内の麻薬取引で得られた金を、当居の監視をすり抜ける手法でメキシコへ送金していたのだ。金を束ねていたのは虹色のゴムバンド
そのマニュエル・ディアスの銀行口座を凍結。
1700万ドル(約18億円)を押収する。
ケイトは、マニュエル・ディアスを不正送金で逮捕しようと考え、マットが「銀行には入るな」と止めるのも聞かずに、証拠書類を押収しに銀行へ入っていく。
ケイトの顔が銀行内の防犯カメラに映る。
ケイトは銀行の頭取(支店長?)から、ディアスの口座の送金記録などを受け取り、これでディアスを逮捕出来ると意気込むが、マットは「ディアスを逮捕などしない」と一蹴する。
この時、銀行の頭取がケイトを見る目が胡散臭い。

ツーソンでマットが「マニュエル・ディアスをメキシコに呼び戻させて、そのボスの所在を突き止めるのが作戦だ」って説明してたんだけどな・・・。ディアスをアメリカで逮捕したら意味ないじゃん?ケイトはバカなの?真面目なの?

ディアスの下に、金が押収された一報の電話が入る。
この時、ディアスが手でもてあそんでいるのは虹色のゴムバンド

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3日目: FBIの上司に直談判 (アリゾナ州フェニックス)
ケイトは、FBIの上司に対し、「合法的に正規の手続きを踏んで捜査をしたい。マニュエル・ディアスを逮捕したい」と直談判する。
しかし上司からは「現状、その捜査方法で麻薬戦争に対して成果が上がっていない。この特殊作戦ははるか上で決められたものだから、法や手続きのことは気にしないでやれ」と説得されてしまう。

納得しきれないケイトは、気を紛らわせるため、レジーに案内させて酒を飲みに行く。
FBIフェニックス支部から出ていくレジーの車の後を、アレハンドロが尾行していく。


3日目: 地元警官と良い雰囲気になるが (アリゾナ州フェニックス)
ケイトとレジーがバーで飲んでいると、一人の男が話しかけてくる。
その男テッドは、レジーの友人であり、地元(フェニックス)の警察官だ。ケイトも、ソフトボール大会でテッドの姿を見かけた事があった。
一緒に飲んでいるうちに良い雰囲気になり、ケイトとテッドはケイトの自宅へ。
ソファーの上で服を脱ぎだす・・・が、この時、テッドがポケットから出してテーブルに置いたあるものに目が留まる。鍵などに交じったそれは、虹色のゴムバンド。ディアスの資金洗浄屋が現金を束ねるために使っていたのと同じ物だった。
ケイトは、テッドがソノラ・カルテルに買収された汚職警官であると気付いた。テッドもケイトにばれた事に気付き、格闘になり、ケイトは首を絞められて殺されかける。
そこにアレハンドロが登場。テッドの頭に銃を突きつける。固まるテッド。

テッドは、捜査情報を探るためにケイトに近づいたのだった。殺すどころか暴力をふるう気すら無かったが、ばれた事で生死をかける問題となった。
銀行の防犯カメラ映像からケイトの顔がカルテル側に流れ、ディアスが汚職警官たちにその画像をまいて、この女(ケイト)を探し、接近し、捜査情報を聞き出すよう命じたのだ。おそらく、銀行の防犯カメラ映像をカルテルに流したのはあの頭取である。
マットが「銀行に入るな」と言っていたのは、こうして顔がばれてしまうからだった。
しかしケイトはサングラスもせずに銀行に入った。そこで、カルテルの手の者がケイトに接近してくるはずと読んだマットは、アレハンドロにケイトを尾行させた。
あのバーはケイトの相棒レジーの行きつけの店のようだったので、おそらくテッドはレジー目当てでバーで待っていて、そこにレジーがまんまとケイト本人を連れてやってきた、という事だったのだろうと思われる。

テッドはパトカー内で、マットとアレハンドロから尋問を受けている。
既に顔はボコボコだ。
マットは「カルテルに買収されている警官の名前を全て教えろ」と迫る。「娘に身辺警護を付けるか、元嫁の住所をインターネットに書き込むか、決めるのは俺だ」と脅す。
そうしている間にもアレハンドロはマットの目や耳の穴に指を突っ込んで執拗になぶる。
観念したテッドは、自供する。

マットは当初の計画外の収穫(フェニックスの汚職警官を一網打尽)があったと喜んでいる。これでソノラ・カルテルの混乱(ダメージ)はより大きくなったのだ。ケイトに、「テッドが汚職警官だと見抜いたから自宅に連れ出した」事にしてケイトの功績にするよう勧める。
一方、アレハンドロはケイトの身を案じ、優しく接する。どうやらケイトはアレハンドロの妻を思い出させる(似ている?)らしい。

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4日目: マット達の拠点のモーテル (アリゾナ州フェニックス)
ケイトとレジーが拠点の部屋を訪れると、部屋の中にはモニターや通信機器が並べられ、大勢の屈強な軍人(デルタフォース)が出撃準備をしていた。
ここでもアレハンドロはケイトの身を気遣う。
モニターにはマニュエル・ディアスの屋敷の上空からの映像が映っている。軍用の偵察ドローンによる監視のようだ。(軍用ドローンは高度3,000メートル上空を飛行するので目視はおろか音さえ無い。)

ディアスに動きがあった。
ディアスが車に乗り込む。メキシコに向かうようだ。
車は黒のベンツ、ナンバーはRIN-31-B7。

その動きを受け、これからマット達はノガレスのトンネルを襲撃しに行くと言い、ケイトとレジーにも付いてくるよう求める。その理由を「CIAは単独での国内活動を禁止されているからだ」と言う。ここでついにマットは自分がCIA所属であることを認めた。
アメリカでは、同一の州で起こった犯罪に関して動くのが警察、2つ以上の州にまたがった犯罪がFBI(連邦捜査局)の管轄となる。司法省に属する機関である。一方、CIA(中央情報局)は、大統領の直属機関で米国への他国からの犯罪などの防止や対策、捜査を担当する事を任務とする機関。
要するに、この特殊作戦で求められているケイトの役割とは、生きる通行手形として、ただ部隊に付いて歩いてその活動を黙って見ていることであり、捜査力・戦力として必要とされていたわけではなかった。
その事実を知り憤慨するケイトらであったが、意地でこの作戦を最後まで見届ける事にし、武装する。

ノガレスに向かう途中、「標的(ディアス)は間もなく国境を通る」と軍のオペレーターから連絡が入り、急ぐ一行。

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4日目: トンネルで銃撃戦 (アリゾナ州ノガレス→メキシコ・ノガレス)
トンネルに到着。
辺りは真っ暗。(光が残る世界から闇の中へ進んでいく美くも緊張感漲る映像はこの映画を象徴するような場面である)
突入直前、「標的(ディアス)はノガレスの南を車で西方向へ向かっている」と軍オペレーターからの報告あり。
マットがデルタフォースに「自由射撃だ。派手に陽動しろ!」と指示し、突入開始。
デルタフォースが先に進み、敵2名をナイフで殺害。さらに奥へ進むと銃撃戦が始まる。

自由射撃(weapons free)とは、脅威もしくは目標に対し自己の判断で兵装を使用して良いという交戦規程のひとつ。簡単に言えば、敵や怪しい者は全て、自己の判断で撃っても殺してもOK、という指示だ。法律もクソも無い。戦争じゃあるまいし・・・いや戦争なのか?ドン引きするケイトとレジーだったが、デルタフォースの後に続いてトンネルに侵入する。
途中、ケイトが銃撃を受け、構えていた小銃が破損。拳銃に持ち替える。
その時、トンネルの横道に向かって銃撃するデルタフォース達を尻目に、トンネルを一人直進していく黒づくめの男の背中が目に入る。アレハンドロだ。ケイトはその後を追う。

トンネルを抜けたメキシコ側は、倉庫になっていた。
そこでは、メキシコ警官シルヴィオが、パトカーで運んできた麻薬をカルテルメンバーの一人と一緒に降ろしているところだった。
銃撃戦の音を聞いて逃げようとするシルヴィオ。
そこへアレハンドロが現れ、カルテルメンバーを射殺し、シルヴィオに銃を突きつける。

シルヴィオ 「メデジンか?」

ギレルモのセリフに続き、また出た、メデジン
(一般的な観客には)この時点ではまだメデジンが何かが分からない、が、ソノラカルテルに敵対する組織名か何かであるらしいことがわかってくる。具体名が出るあたり、ソノラカルテルにとって大きな脅威として迫っている組織なのだろう。ギレルモは「メデジンこそ地獄だ」と言っていた。冒頭の人質事件やフアレス市内で無残な死体を吊っているソノラカルテルから「地獄」と呼ばれる組織とはいったい?アレハンドロはその一員か?

と、そこにケイトも登場。
アレハンドロに銃を向け止まるよう命じるが、逆に腹部(防弾チョッキ)を2発撃たれ、倒れる。
 「2度と俺に銃を向けるな。アメリカに戻れ」
アレハンドロはパトカーをシルヴィオに運転させて、倉庫を出ていく。
軍オペレーターと通信し、標的(ディアス)の現在位置とルートを確認する。
息子がいるんだ、と命乞いするシルヴィオに対し、家族のために黙って運転しろというアレハンドロ。

トンネルのアメリカ側では、マットやデルタフォース達が襲撃成功を祝っている。アメリカ側の死者・負傷者はいなかった模様だ。
遅れて、ふらふらのケイトがトンネルから出てきた。
ケイトはマットに殴り掛かり、メデジンとは何かと問う。
マットはそんなケイトを組み伏せ、説明を始める。(↓意訳)

「メデジンとは、かつてアメリカに流入する全てのドラッグを扱っていたコロンビアの麻薬カルテルだ。その時代にはアメリカ(CIA)はメデジンからみかじめ料を取ったり麻薬の出荷量を決めるなどして(一応)コントロールが出来ていた。だが、90年代にコロンビアカルテルが壊滅し、代わりにメキシコカルテルが台頭しアメリカシェアNo.1になってからは絶賛暴走中で、今やCIAの手に追えない状況になってしまった。そこでメデジンと組んでメキシコカルテルを潰し、再びコントロールできる状態に戻すこと(コロンビアカルテルの復権)がこの作戦の目的だ。」

「アレハンドロはメデジン・カルテルの殺し屋(SICARIO)だ。かつて検察官だったが、ソノラ・カルテルに妻の首を切断され、娘は酸に沈められて殺された。彼はその復讐を遂げる為なら、麻薬カルテルだろうがアメリカだろうが誰とでも手を組むし、邪魔は許さない。」


ケイトは世間に暴露してやると怒るが、マットは「それはいい考えじゃない」と言う。

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4日目: ディアスを捕捉 (メキシコ・ノガレス郊外)
アレハンドロらはディアスが運転する車に追いつく。
シルヴィオは、アレハンドロに命じられるまま、サイレンを鳴らしディアスに停車するよう命じる。
停車し、車から降りるディアス。
続いてパトカーから降りてきたシルヴィオに対し「何だ?私を知ってるだろ?」と声をかけるが、アレハンドロが後ろの暗闇から銃撃。
シルヴィオ死亡。ディアスは足を負傷。
アレハンドロはディアスと共にベンツに乗り込み、ファウスト・アラルコンの下まで運転させる。
シルヴィオとパトカーは置き去り。(お前は良い警官だって言ってたのに・・・それはそれ。)

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4日目: アラルコンと対峙 (メキシコ・ノガレス郊外)
アラルコン邸に着いたアレハンドロは、ディアスの首を切り、護衛4名を射殺。戦闘力が凄く高い。検察官をやめてからいったいどんな人生や訓練を経てきたのか。おそらく壮絶なものだ。

アレハンドロ 「目標に着いた。場所は確認できているか?」
軍オペレーター 「OK。家の中には6人いる

家に侵入し、更に護衛1名を射殺。
料理を用意中の女中も1名いた、が、それは見逃す。(残り4名)

残り4名は、ファウスト・アラルコンと、その妻、息子2名だった。
中庭で夕食をとっている。
周囲に警戒しながら近づくアレハンドロ。
「ボナペティ!」(Bon appetit。フランス語。たくさん召し上がれの意)と声をかけて、空いた席に着く。
続けて、びびるアラルコン一家に対し食事を続けるよう命じ、息子が英語を知らない事を確認すると、ファウストに英語で会話しようともちかける。

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ファウストは、アレハンドロを「嘆きの検察官」(grieving lawyer)と呼ぶ。
彼はアレハンドロの事を知っていた(覚えていた)ようだ。
彼こそが、アレハンドロの妻子殺害を命じた男。

ファウ 「君の今の姿を妻は誇りに思うか?」
アレ 「娘のことを忘れるな」
ファウ 「娘か・・・。私を恨むな。(it wasn’t personal.)」
アレ 「俺は恨んでる。(it was to me)」


私個人の恨みや都合で命じた事ではなかった(から私を恨むな)と語るファウストに対し、アレハンドロは俺にとっては個人的な事だ(俺は個人的にお前を恨んでいる)と返答する。
それを横で聞いた妻は、この男が(任務や金ではなく)復讐を目的に来た者なら、説得や買収で止める事は出来ない、自分たちはもう助からないと悟ったのだろう。肩を震わせて泣き出す。

ファウ 「息子は見逃してくれ」
アレ 「天に召される時が来た」 “Ahora vas a conocer a Dios”(神様に会いにいく時間だ)


言い終るが否や、アレハンドロはファウストの妻と2人の息子を一瞬で撃ち殺す。
息子に配慮して英語で話そうと言っていたのに、最後のその一言をスペイン語にしたのは・・・。

アレ 「お前は食事を続けろ」

言葉を失い、絶望してわななくファウスト
アレハンドロはそんなファウストを束の間眺めた後、彼を射殺。

家族にもファウストにも最後まで食べろと言い続けたのはなぜ?
助かる可能性を微かに感じさせて、その希望にすがらせ、逃げたり反撃しようという気を起こさせない為かもしれない。もしかすると、カトリック教徒であるメキシコ人に最期の祈りをさせない(天国へは行かせない)という意味があったかもしれない。
女中は違ったので見逃した(又は目撃者として残した)が、妻子は初めから復讐の対象だったのだ。妻子を殺し、ファウストに絶望を味あわせてから殺す。一切の容赦も妥協も無駄も無い、完璧な復讐だった。(ここの展開が当初の脚本では異なっていた件について、考察で後述)

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5日目: ケイトが自宅でアレハンドロと対峙 (アリゾナ州フェニックス)
翌朝。(夕方?)
自宅のバルコニーで物憂げにタバコを吸うケイト。
ふいに家の中から気配を感じて振り向く。
アレハンドロが「しばらくバルコニーには立たない方がいいぞ」と声をかける。
ケイトはソノラ・カルテルに顔が割れている。バルコニーに立つのを控えるどころか転勤した方が良いかもしれない。

恐る恐る部屋に入ると、中には、手袋をはめた手に(ケイトの)拳銃を持ったアレハンドロが座っていた。
おびえるケイトに対し、着席を勧める。
「この作戦は全て合法的に行われた」と書かれた書類にサインをするよう求めるアレハンドロ。
サインは出来ない、と涙を流すケイト。
そんなケイトを大丈夫となだめるアレハンドロ。泣いている姿を見ると娘を思い出す、と言う。(先日は妻に似ていると言っていた。娘は妻似だったのかもしれない。)
しかしなおサインを拒むケイトに、アレハンドロは銃を突きつけ、「サインをしないなら君は自殺する事になる(自殺に見せかけて殺す)」と脅す。
アレハンドロなら脅しではなく実行するだろう。
ケイトは書類にサインした。

サイン済み書類を手に入れたアレハンドロは、ケイトの拳銃を分解して部屋にばらまきながら、「ここは狼の町だ。君は狼ではない。まだ法秩序が残るどこか小さな町に移るがいい」と言って立ち去る。
アレハンドロが部屋を出て行った一瞬後、ケイトは銃の部品を拾い集め組み立て、バルコニーから、駐車場を横切っていくアレハンドロの後姿に銃を向ける。
振り向き、じっとケイトを見つめるアレハンドロ。
つい前夜にはケイトに「2度と俺に銃を向けるな」と言って即反撃した彼だが・・・、復讐を終えた彼はもう撃たれても構わないのだろうか?どこか寂しげにも見えるが、その表情から感情は伺えない。
ケイトはアレハンドロを撃てず、銃を下ろし涙する。
そんなケイトに背を向けて立ち去るアレハンドロ。

ケイトはここで何か他にやりようはあったのだろうか?
サインをしてもしなくても結果は同じ。もう作戦は実行されてしまった。サインを拒んで殺されたとして、それで何が残るのだろうか。彼女の正義を貫いたことにはなるのだろうが、死んで、消えて、何も残らない。彼女の死後、ケイトからの報告を受けていたという体でFBIの上司などが書類にサインをするだけの事だろう。
アレハンドロを撃っていれば良かったか?そしてどうする?マスコミに作戦の内容を暴露する?ついでにマットも撃つ?いや、それは彼女が守ろうとした正義ではないし、何の意味も持たない。
力を持たぬ正義は無意味。
強力な暴力は必要悪。

より強力な暴力を持つ者が法を定め正義を名乗る、そんな残酷な現実に対し主人公が一矢も報いることが出来ないという、映画にしては珍しい結末だったように思う。

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5日目(ラスト): サッカーをするシルヴィオの息子 (メキシコ・ノガレス)
父親(シルヴィオ)は帰ってこない。
昨夜死んでしまっているのだが、まだ妻と息子はそれを知らない様子。夜の(カルテルの)仕事が長引いているのだろう位に思っているようだ。
母を連れてサッカーに行く息子。
子供達がサッカーの試合に興じ、それを親たちが見守っている。
遠くから銃声が聞こえ、ゲームが中断し、皆が銃声が聞こえた方角に顔を向ける、が、ほどなくして試合は再開される。
これが彼らの日常なのだ。

ここで題名(原題)『SICARIO』が画面に大写しになり、END

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【4.考察など】

●まず題名について
最後まで見れば分かる事ですが、SICARIO(殺し屋)という原題は若干ネタバレでもあります。
要はこの映画は、アレハンドロの個人的な復讐劇で、そこにアメリカの思惑が被り、そのアメリカの思惑にケイトが巻き込まれた、という物語なのですが、それが分かるのは映画の最後。実質的な主役はSICARIOであるアレハンドロだったことがわかります。
まぁ、みんな題名を知ったうえで映画を観ていると思いますが、その流れを踏まえて題名が最後に表示されるのでしょう。

一方、邦題は『ボーダーライン』(境界線)。
これはどちらかというとケイト目線に寄った題名です。
日本版キャッチコピーが「その善悪に境界はあるのか?」となっているように、ケイト(と観客)が善悪の一線についての価値観を揺さぶられていく物語、を想像させます。
まぁ、間違ってはいませんが、ミスリードを誘っている気がしないでもないです。
ただ、国境も意味しますし、作中でも光側と闇側を対比させるような映像が目立ちますし、あと、最後にシルヴィオの子供がサッカーするシーンでグラウンドにセンターラインが描かれてないのが印象的だという指摘もネットで見かけました。なるほど境界線はこの映画のテーマだったかもしれませんね。


●ファウスト・アラルコンがソノラ・カルテルのナンバー3である件
映画の最初の方で、彼はナンバー3だとFBI上官から説明されているにも関わらず、その後の物語に流されてなんとなく彼こそがソノラ・カルテルのトップ(ナンバー1)であるように思い込んで映画を観てしまいました。そういう方、多いんじゃないでしょうか?

ところが、続編製作決定のニュースが。

「ボーダーライン」続編製作へ エミリー・ブラントら主要キャストも続投 - 映画.com
http://eiga.com/news/20160405/8/


観終わった時には、続きが作れそうな物語とは思えませんでしたが、ファウスト・アラルコンがナンバー3に過ぎなかったのであれば話は違います。
トップ(ナンバー1)が消されれば組織は消滅しかねませんが、ナンバー3が消されただけでは組織にとって致命傷というほどのダメージにはなりません。だからマットや高官達は今回の物語の先の絵図をある程度描いているはず、計画にはまだ続きがあるはず。それが劇中で全く臭わされてすらいない点は、私個人としてはちょっと不満です。

ナンバー3という設定に触れなさ過ぎているせいで、ネットで見るレビューでは、どの方もファウスト・アラルコンが麻薬王(トップ)だと勘違いしてしまっており、それが最後の展開について現実味が薄いとか凡庸なアクション映画になってしまったとかの感想を多くの人に持たせてしまっている原因になっているように思います。
(妄想ですが)もし私なら、最後の、ベランダでタバコを吸うケイトにアレハンドロが声をかけるシーンのセリフを、「俺たちはまだソノラのナンバー3を消しただけだ。しばらくバルコニーには立たない方がいいぞ」としたいですねぇ。
ただ、かと言って、ナンバー3であるという点を現状以上に強調してしまうと、続編ありきの映画という匂いが出てきてしまうし、最後の展開の衝撃度も落ちてしまう、というデメリットがありそうです。監督も判断が難しいところだったのではないかと思います。

さて、続編の展開はどうなるのでしょうか?
今回ソノラカルテルのナンバー3が暗殺されたことで、ソノラカルテル内部と他のメキシコカルテルには今後混乱(抗争等)が起きていくでしょう。
アメリカ(マット達)としては、さらにメキシコカルテルの弱体化を決定的にするために、ソノラカルテルのトップの逮捕か殺害、組織消滅するまで攻撃を続けるのかもしれません。しかしソノラだけを叩いて、結果、他のメキシコカルテルに人員や資源が流れて取って代わられては意味が無い。他のメキシコカルテルにも牽制をしなくては。もちろんメデジンにも勢力拡大の為に積極的に関与してもらわなくては。しかしメデジンはおとなしくアメリカのいう事を聞いてばかりいるかな?復讐を達成したアレハンドロは今後もメデジンの殺し屋として働き続けるのかな?
『Sicario 2』(※仮題)には、単純に、逆襲に転じたソノラカルテル(ナンバー1・2)とアメリカ&メデジンの暗殺合戦に収まって欲しくはありませんね。
いっそ、マット達が計画の続きとして、法も倫理もケイトや観客の想像も更に超越したやり口でメキシコのカルテルを徹底的・一方的に蹂躙していく展開の方が見てみたい気がします。


●現実のソノラ等の麻薬カルテルについて
実在する(した)組織名が使われていますが、その設定は若干現実と異なります。
現実での各カルテルは、こんな様子です。

ソノラ・カルテル Sonora Cartel
1980年から1989年にかけて活動していた麻薬カルテルで、既に組織消滅しティファナ·カルテルとシナロア・カルテルに人員が移った。

シナロア・カルテル Cartel de Sinaloa
現在のメキシコ国内最大の犯罪組織。アメリカの麻薬密輸シェアナンバー1。
ソノラ・カルテル、コリマ・カルテル、ミレニオ・カルテルは現在シナロア・カルテルの枝である。
2007年以降、シナロア・カルテルとフアレス・カルテルとの間では密輸ルートであるフアレス市を巡ってたびたび猛烈な抗争が起きている。
(劇中でも、ギレルモが逮捕された途端に抗争が起きていましたね。)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%82%AD%E3%82%B7%E3%82%B3%E9%BA%BB%E8%96%AC%E6%88%A6%E4%BA%89

メデジン・カルテル(Cartel de Medellín)
1970年代にコロンビアのメデジンにパブロ・エスコバルによって創立された有名な麻薬カルテル。
アメリカ向けのコカインの製造・販売を仕切って隆盛を極めたが、1990年代に敵対組織や治安維持部隊による幹部の殺害や投降により組織は弱体化し、1993年にパブロ・エスコバルも治安維持部隊に射殺されて組織は消滅
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%83%87%E3%82%B8%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%AB%E3%83%AB%E3%83%86%E3%83%AB


画像検索はしない方が幸せでいられます。
劇中のケイトみたいにドン引きする羽目になるでしょう。私もしません。

ちなみに、当初脚本では、物語に登場するのはソノラ・カルテルではなく、現実の現在最大手シナロア・カルテル(上記)です。
現役のシナロア・カルテルを出してしまうと映画関係者の身が危ない、という都合で変更されたのかなと思います。


●当初脚本と完成した映画の違うところ
当初脚本は、ネットで「Sicario Script」で検索すればすぐ見つかります。
英語ですけど、そんなに難しくないです。

Sicario Script LA Screenwriter
http://la-screenwriter.com/2016/02/23/sicario-script/


この当初脚本では、ソノラ・カルテルではなくシナロア・カルテルだったり、アレハンドロがけっこう雄弁だったり、ケイトをテッドから救うのがアレハンドロではなくレジーだったり、マヌエル・ディアズが乗る車がベンツではなくレンジローバーだったりと細々とは違うのですが、特に大きく違うのはラストです。
ディナーのシーンで、アレハンドロはメイドに子供達を食卓から離れた場所へ連れて行かせ、それからファウスト・アラルコンに「今夜ここで、お前が死ぬか、代わりに妻を殺させてお前は恥と共に生き延びるか、どちらかを選べ」と言います。ファウストは「俺は恥を選ぶ(妻を殺せ)」と答えますが、アレハンドロはファウストを撃ち殺し、妻には「彼の金を持ってどこか遠く離れた場所に隠れて子供を育てろ」と告げ、立ち去るのです。その後のケイトへのサインの強制も無し。

これだとありがちな展開ですね。
でもそれを、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督とアレハンドロ役のベニチオ・デル・トロとが話し合って変更したそうです。
アレハンドロは寡黙で、目的(復讐)に関しては非情である方がいい。いやそうあるべきです。復讐者のお手本と呼びたい。
私がこの映画で一番好きなのは、ファウスト・アラルコンの最後の絶望した顔です。あのアップが最高!

それでも、妻子は殺すべきではなかった?
そもそもファウストに妻子がいるかどうかは不明だったので、アレハンドロだって、あの場に居合わせさえしなければ追って命を狙う事はなかったのではないか・・・、もしファウスト邸がもっと遠くて、到着がもっと夜遅い時間で、子供たちは別室で寝ていたのなら家族は撃たなかったのではないか・・・?そうも思えますが、私の予想では「家族がいれば家族も皆殺し」というのがメデジン・カルテルからの指令だったのだろうと思います。アレハンドロもそれに異論は無かったのでしょう。
・・・人道的でないことを承知で書くなら、
あの時に妻子が食べていたものは、ある意味でアレハンドロの嫁と娘の肉です。嫁の首を切断し、娘を酸で溶かして得た金で生きている人間です。あの妻子が、夫が麻薬カルテルの幹部であり、自分たちの生活がそういう金で賄われていると知らなかったはずはありません。万が一知らなかったとしても、その無知が罪となります。あの妻子には、いつか対抗組織や軍隊や個人的復讐者がやってきて銃を向けてくる前に、逃げ出すという選択肢がありました。もちろん追われるし、豪勢な生活とはさよならする事になります。現実味は低い。でも殺されることは無かった。
結果的に彼らは、麻薬組織幹部の家族として生活していく事を選び、その為にその命をリスクに賭け、そして賭けに負けた(殺し屋が来た)。殺されるべきだとは言いませんが、残念ながら殺されても文句を言う資格が無い。シルヴィオも同じです。

今年は復讐をテーマにした大作映画が多い気がします。『レヴェナント:蘇えりし者』とか、『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』とか。『バットマンvsスーパーマン』もそうかな。他にもあったような。この中では、私はこの『ボーダーライン』が一番好きです。
今の時代になぜ復讐をテーマにした映画が続々と公開されているのか?人々がテロとの戦争に感じている不安や疲れが反映されているような気がします。
ちなみに、復讐劇を描いた映画では、少し昔の『ヘンゼル&グレーテル』も私のお気に入りです。あの有名な童話の後日談のB級ホラー・アクション映画なのですが、ネタバレで申し訳ないけれど、その映画の最後の「復讐しても過去は変わらない。両親も帰ってこない――。だが、気は晴れた」というナレーションがやはり最高に清々しくて気持ちが良いのです。復讐は虚しい、そんな事は分かっているけれど、ね。

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シルヴィオの息子である少年は、将来どうなるでしょう?
父親(警官)と同じように家族を養うために長いものに巻かれる(汚職警官となる)?父の仇を取るためにソノラカルテルの殺し屋となってメデジンカルテル(アレハンドロ)と戦う?そもそもの麻薬組織全般を仇と見て、クリーンな(正義の)警官となる?それとも全く父や麻薬に関わらない人生を歩む?・・・あなたならどうしますか?


●アラルコン邸の警備が手薄過ぎるのでは、という話
どこに居るのか所在を掴ませない大物、なので、要塞のような家に住み、周りを軍隊のような大勢の手下で固めてしまったらそれで所在がバレてしまいますね。
なので、郊外で最低限の護衛だけ付けてひっそりと暮らしている事の理由にはなっています。
ディアスに護衛を連れずに単身で来させたのも、所在を知る者を少なく抑えることを優先するからだと考えれば納得がいきます。
それに、ほら、ナンバー3ですし。麻薬王じゃないし。

その邸宅をアレハンドロ単独で襲わせるより、もうそのままデルタフォース部隊で襲撃した方が確実に暗殺出来る気がしますが、それはなかなか出来ません。
アメリカ国内で超法規的な措置を認められているマット達ですが、外国であるメキシコ国内にまでその権利は及びません。万が一にも失敗して、アメリカの特殊部隊がメキシコ国内の麻薬組織幹部の命を狙ったというニュース(と共に隊員の遺体の映像)が世に流れるなんてことは、絶対にあってはいけないのです。かといってメキシコ国軍に協力依頼すれば、カルテル側に情報が漏れる可能性が非常に高い。メキシコの国や軍に無断でミサイルを撃ち込むわけにもいかない。

上空から軍用ドローンの援護を受けて、護衛の配置位置から家の中の人数まで把握したうえで、高度な軍事訓練を受けたアレハンドロが奇襲するわけなので、成功確率は充分高く見積もれたことでしょう。アレハンドロが非現実的な無双をしたわけではありません。

そもそもなぜ彼らはナンバー3を狙ったのでしょうか?
マット達の目的はメキシコカルテル(ソノラ)の弱体化コロンビアカルテル(メデジン)の復権です。
いきなりソノラを潰そうとトップの暗殺を図るのは非常に難しい。トップは要塞のような家に住み、周りを大勢の手下(軍隊)で固めているものですから、そこを襲うには大規模な戦争が必要、簡単に言えば無理です。
ところがここに、所在や多くの個人情報が不明な大物がいる。慎重に姿を隠して生きている以上、所在さえ掴めばおそらく暗殺は(割と)容易な状況で生活しているはず。しかも彼の序列はナンバー3で、暗殺に成功すれば組織に大きな混乱を引き起こせる事が期待できる適度な大物。慎重に姿を隠していても暗殺された事実は、組織に対しインパクト大の警告になる。都合の良い事に手がかり(いとこ兼部下)もアメリカ国内にいる。
そこでメデジンの殺し屋であるアレハンドロの出番。アメリカ国内のソノラへの攻撃はアメリカが行い、(こっそり連携して)メキシコ内での攻撃はアレハンドロが行う。暗殺がうまくいけばメデジンがソノラに大打撃を与えたということで、メデジン復権のシナリオに役立つ。失敗しても、カルテルの抗争で殺し屋が一人死んだというだけのこと。アメリカ(CIA)は第2、第3のアレハンドロを送り込むだけです。まぁ、アレハンドロほど優秀かつ都合が良い強烈な動機を持つ人材はそう多くはいないと思われますが。

ということでこの物語は大体筋が通っていると思っています。
ただし、アメリカにいた部下のマニュエル・ディアスを自家用車で家まで直接来させてしまう展開はいかがなものでしょう。
マニュエル・ディアス名義の家で大量の死体が発見され、兄(ギレルモ)が逮捕されてアメリカに身柄を引き渡され、ディアス本人も銀行口座を凍結され、飼っていた警官も逮捕されてしまったのだから、もうアメリカの捜査当局に彼がばっちりマークされている事は分かりきっていたはず。
そもそもディアスを家まで呼び出す必要性がイマイチ分かりませんが、せめて来させるにしても、車を乗り換えさせたり服を着替えさせたり人ごみに紛れさせたりして尾行をまく努力はさせるべきだったと思います。


●マットの計画はもともとどうだったのか

物語スタート時における計画
1.ギレルモの身柄を米国に引き取り、拷問して何か情報を引き出す
2.引き出せたら、それをもとに色々叩く
3.マニュエル・ディアズの資金を凍結する
4.そうしてディアズがメキシコに呼び戻されるよう仕向ける
5.ディアズを追跡して、アラルコンの居場所を特定する
6.(後日)アレハンドロを送り込んでアラルコンを殺害する

最終的に実行された計画
1.ギレルモの身柄を米国に引き取ったら、トンネルの存在の噂を聞いた
2.拷問したらトンネルの場所が特定できた
3.ディアズの資金を凍結する
4.運よく、フェニックス一帯の汚職警官も一網打尽
5.そうしてディアズがメキシコに呼び戻されるよう仕向ける事に成功
6.ディアズを追跡しつつ、トンネル襲撃
7.そのどさくさにアレハンドロをトンネルを通じてメキシコに送り込む
8.アレハンドロに、ディアズの捕捉、アラルコン所在特定&殺害させる

この作戦はもともと短期勝負ではなく、もっと長い日数がかかる事が想定されていたのではないでしょうか。
それがトンネルが見つかったおかげで、わずか4日間のスピード決着になったようです。


●監督ドゥニ・ヴィルヌーヴについて(余談)
監督は、『灼熱の魂』、『複製された男』、『プリズナーズ』のドゥニ・ヴィルヌーヴ。
(余談ですが、このブログでは同監督の「『プリズナーズ』ネタバレでお節介な解説」記事が人気です。)
これと『プリズナーズ』の2つの映画に共通した私の感想は、とても良いのに、説明が少なすぎてちょっと考えないと分かりにくい所がある、傑作だと絶賛するには一歩及んでいない、というもの。でもだからこそ語りたくなってしまうのでしょう。(でもボーダーラインの方がずっと好き!大好き)
この監督の次回作は『ブレードランナー2』だそうです。この映画の続編への続投は未定だそうですが、どうなりますかね。


以上。



あとこれは書くべきではない・・・というか書いたら自分が誰かから復讐されそうな気がするものの、でも書かずにはいられない一文を最後に。
この映画の詳細を調べている時に、ネットで見かけてしまったこの一文を転載します。




(↓ やや閲覧注意 ↓)





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眉間に皺よせたエミリー・ブラントはニコラス・ケイジの若い頃に似てる
ということに気づいてちょっとショックだった


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ジャンル:映画
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207.  カマクラ | URL  | 2016/11/12(Sat) 12:25 | #-[ 編集]
とてもわかりやすかった。でも続編てどうなるんでしょう。泥仕合にしかならないような気がしますが。
209.  グドすぴ | URL  | 2017/01/13(Fri) 01:18 | #-[ 編集]
>>207.カマクラさん
> とてもわかりやすかった。でも続編てどうなるんでしょう。泥仕合にしかならないような気がしますが。

泥仕合になるのが普通ですし、現実も泥仕合になっているようですし、その非情さを描くのも一手でしょう。
またはより非情な世界をフィクションとして示して何かを訴えかけようとするのもまた一手ではないでしょうか。
私はどちらかというと後者に期待するのですが・・・
211.  ラモン | URL  | 2017/01/17(Tue) 23:53 | #-[ 編集]
 こんにちは。なんとなく昨年見た本作のことを思い出しネットをさまよっていたところ、この記事にたどり着きました。
 劇中の作戦の詳細やその背後にある社会背景、現実の出来事と物語内で創作されている事の違いまで、事細かに調べられていて素晴らしい解説だと思いました。
配給会社はなんでこういう大事なことをパンフレットに書いてくれないんでしょうね…。
 続編が制作されるそうで、個人的に近頃続き物映画で感心したことがめっきりなく若干不安ですが、やはり楽しみになってしまいます。またマットとアレハンドロに会えたらいいなと思います。(エミリーブラントは別にいいや…笑)


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